佃 七緒

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 大阪・京都および他のレジデンスなどにて制作を行う。それぞれの土地に住まう人々の、日々の生活を構成する道具・家具・住居などの具体的な情報や、その中で営まれる日常の物語を元に、ドローイングや、陶素材、そして日常でなじみのある素材を用いて立体および空間制作を行う。

 ある個人の日常の出来事、慣れ親しんでいる習慣、大事にしている言葉などの文字情報と、生活環境の中にある物や空間の形状・機能などの視覚情報を取り出し、主に生活で見慣れた素材を用いて「再現」を試みる。日頃見慣れているものを、その切り取り方、素材の置き換え方、組み合わせ方の工夫により、見覚えはあるが見慣れないかたちや空間に変換する。意識的につくられた少しの違和感から、日常に戻る視線や思考を呼び出し、日々の生活の中にある些細な面白さ・豊かさを自他共に再発見することを目指す。

 私の興味は、人々の生活の中の具体的な物語、またその物語と必ず共にある、語る人の感情と実際の日常の環境を収集することにある。そのために、まず自身の慣れ親しんだ土地とは異なる場所に向かい「よそもの」になる。自身が生まれ育った環境と比較することで、その土地にとって新しい視点を持つ。その視点を持って場所を観察し、人々と交流する。そしてそれぞれの人が持つ具体的な出来事・物を拾い集める。ただし、文化の比較を行うことは目的ではなく、その場所と人々を知る手段にすぎない。どれほど異なる生活や文化であっても、逆に似通った環境であったとしても、その場所の誰かの具体的な出来事は、自分の身体を生かす「日々の生活」という共通の物語の中で、誰にとっても何かを発見するきっかけとなりうると考えている。ある人の個人的で魅力的な物や出来事を、自身を通すことで、たくさんの人の目に触れられる、かたちあるものに「翻訳」するような作品制作を試みている。