佃 七緒

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大阪・京都および他のレジデンスなどにて制作を行う。それぞれの土地に住まう人々の、日々の生活を構成する道具・家具・住居などの具体的な情報や、その中で行われる営みの様子を元に、ドローイングや、陶素材、生活の中でなじみのある素材を用いて、立体および空間制作を行う。

ある個人の出来事、身についている習慣、大事にしている言葉などの文字情報と、生活環境の中にある物や空間の形状・機能などの視覚情報を、自身の目線で抜き出し「再現」を試みる。日頃見慣れているものを、その切り取り方、素材の置き換え方、組み合わせ方などの工夫により、見覚えはあるが見慣れないものや空間への出会いをつくる。意識的に配置された少しの違和感から、鑑賞者それぞれの日常に戻る視線や思考を呼び起こすことを目指す。

誰かの生活を知るということは、誰かが生きるために自分や周りの環境を「カスタマイズ」してきた過程や結果を知るということである。作品を通し、他者の生活を表象したカスタマイズの一部を意図的に抜き出し提示する。鑑賞者が、自然と他者の思考や行動の経過の一部を辿り、想像力を働かせるきっかけとなるような空間・機会づくりを試みている。

また近年は、言葉が語る人ごとに個々にカスタマイズされ使われていく様子にも注目し、対話プログラムやワークショップのファシリテーションも行う。特に作家が作品制作の周辺で扱う言葉を、他分野の鑑賞者の力を借りて「ほどく」ことで、両者が日頃用いる既存の言葉の枠を超えた気づきや出会いを目指す。