《重たい鑑賞》2022

一般社団法人BASE主催の社会人向けワークショッププログラムBASE ART CAMPの講師としてワークショップを実施。

このワークショップでは、受講生が個々に持ち寄った収集物を棚に入れていくように紙に配置し、それぞれの「ヴンダーカンマー」(元は蒐集した珍品の陳列室を意味する)を制作した。また、それらを最後は隣り合わせて展示し、受講生全員の意識や無意識が混在した大きなひとつの「ヴンダーカマー」を制作した。(写真:三輪恵大)

このワークショップを行うに当たり、参加者には事前に3ヶ月ほどかけて「ログ袋」と呼ぶ大きな茶色の紙袋に日々の様々な物(大切な物からどうでもいいものまで)を収集してもらった。それら収集物を、切り開いたログ袋を台紙にし、あらためて配置して見て、貼り付ける。これは、コラージュを目的とするのではなく、3ヶ月の雑多な日々の収集物を「今」の目線であらためて眺め、どう配置したいか、今ならどういった関連性を見出すか、などを手を動かしながら探ることを目的としている。

合わせて、収集したログ袋の中身を模写する、ということと、他の受講生の日々の「手振り」を見せてもらい描く、ということを行った。これは、手を動かし「もの」を写し取ることで、その「もの」とただ「見る」以上の新たな関係性を見つける機会とする。また、展示の最後に、描いた他者の「手の絵」を全員で作品のあちこちに配置していくことで、「誰かの日々の動き」を写し取ったものを情報として重ねていく。

 

約20名の受講生の個々の収集物に、その日描いた「もの」や「他者の手」の絵が隣り合い重なり、情報が積層していく。ワークショップの最後には、大きなひとつの収集物の積層となった「ヴンダーカマー」について、受講生それぞれに作品としてタイトルを付けてもらい、そのタイトルに付随する説明を書いてもらった。

何かを「鑑賞する」ことは、見るものと自分との関係性を新たに構築していくことであり、創作することは、作る対象や素材と自分との関係性を構築していくことであるとも言える。このワークショップでは、自身の手や身体を使って「鑑賞」を行い、シームレスにつながる「鑑賞」と「創作」の行き来を体感し、プログラムの後半にある自主制作に向けて、「つくる」ことの入り口を体験する時間を目指した。